宮田裕章(CoIU(仮称)学長候補)×(一社)飛驒高山大学設立基金 理事会 × 水野学(good design company代表)

【トークセッション】CoIU(仮称)が掲げる“共創”を紐解く

2022年3月26日(土)に行われたイベント「Co-Innovation Conference 2022」では、「“共創”を紐解く」をテーマに、宮田学長候補や理事会のメンバー(井上代表理事・川戸理事・秋山理事)、大学ロゴを制作した水野学氏によるトークセッションを実施しました。その内容について一部をピックアップして紹介いたします。

ボンディングシップ誕生秘話


秋山理事(以下秋山) CoIU(仮称)はどんな大学で、今までの大学と何が違うのかというと、宮田さんが大変分かりやすい例を先ほどおっしゃっていて、これまでの大学は筋トレばかりやっていたと。CoIU(仮称)では筋トレだけじゃなくて実際のフィールド、試合に出て、筋トレで鍛えた筋肉を使うことで、今後さらにどういう筋肉をつける必要があるのか、強くなるにはどこをどう鍛えたらいいのかを、学びながら成長していく。そういう場を提供する大学であるということをご理解いただけたかなと思います。

この分科会の前には、ボンディングシップの実証実験に参加した学生からの発表もありましたが、そもそもなぜボンディングシップが生まれたのか、川戸さんから簡単に歴史をご紹介いただけますか?

川戸理事(以下川戸) 井上代表理事との出会いは7~8年前なんですけれども、一昨年くらいに大学をつくりたいという話を聞いて、それから大学について井上さんと色々壁打ちをするようになりました。もともとは飛騨をどう良くしていくかを大学で追究しながら、その成果を全国に広げていく構想だったんですが、地域によって経済や文化、歴史が違いますし、単純なコピペではダメなんじゃないかという話になって、「まずは色んな地域でやってみたいね」「どうせやるんだったら大学が始まる前に実験的にやってみたいよね」という話からボンディングシップの形が見えてきました。

井上代表理事(以下井上) 川戸さんとの壁打ちの中で、「地域を越境していくことがいいんじゃないか」とひらめいたのが1年半くらい前ですね。それから、今日紹介したような実証実験までを行うことができました。

秋山 設立者である井上さんは、先ほどのボンディングシップ実証実験参加学生の発表をどうご覧になりました?

井上 私自身、大学をつくる前からビジネスをやっていて、昨年もグループで10名の新入社員を採用しました。その中で、地域で実践をしてきた学生と筋トレばかりやってきた学生とでは、社会に出たときに圧倒的な差があると感じています。

今日発表してくれたお二人は大学2年生の時点ですでに、ボンディングシップじゃなくて「自分がこういうことにチャレンジしたいんだ」というところまで到達していましたよね。CoIU(仮称)で企画しているカリキュラムにおいてもボンディングシップを実施する2年次が分岐点じゃないかと思っています。2年次までに地域での実践を体験すると、自分の原体験をもとに何かが芽生えるのではないかという可能性を感じました。

しなやかな未来を表す CoIU(仮称)のロゴデザイン




秋山 水野さんにお伺いしたいんですが、CoIU(仮称)のロゴの制作背景を改めて教えてください。

水野学(以下水野) 宮田さんのヘアスタイルを見ていただければ分かるとおりですね、“カラフル”というテーマは宮田さんから提案がありました。他にも色んな思いからロゴのカラフルは生まれているんですけど、個の大切さがこの一枚に集約されるといいなあと思って制作しました。



秋山 水野さんの表現について宮田さんはどう思われますか?

宮田裕章(以下宮田) 多様なものを認めながらどうつながるか。つながるだけだとですね、AIでコントロールするといったような可能性もあるとは思いますが、そういった画一的なものではないんですね。

水野さんのデザインは1パターンだけではなくて、色々なカラーバリエーションや風景、四季の変化、パレットの中から全部を使うのもいいし、青色部分を使うのもいいし、ピンクを使うのもいいし、使い方そのものにもボトムアップの提案があるんですよね。

我々も枠組みを柔軟に持ちながら世界の未来を見ていくことはすっごく大事じゃないかなと思っています。例えば、みんなカーボンニュートラルと言っているけれど、炭素を出すことがいい世の中になる可能性もあるわけです。しばらくはないと思いますけど。振り返ってみるとプラスチックってそうですよね。昔はプラスチックの方が環境に良くて、森林破壊になるから木は使うなと言われていたのが、今は逆転してるわけです。木をどんどん使いましょうと。でもプラスチックの環境コストが下がったらプラスチックが推奨される可能性があるわけですよ。

つまり、個別の要素にとらわれると局面を大きく見誤るということです。持続可能な新しい未来をつくる手段として、カーボンニュートラルをはじめとした色んな手段があるだけなので。自分たちの未来は絶対ではないと。多様な未来のあり方がある中で、常にチャレンジし続けながら色々な可能性と対話し続けることが大事ですし、相対的な中でのしなやかな未来を水野さんのデザインが表しているんじゃないかなと思います。

CoIU(仮称)をつくる過程そのものが共創!


秋山 宮田さんや水野さんが加わったことで井上さんの想像を超えた世界になっているのかなと思うんですが、設立者としてどう思っていらっしゃいますか?その上で、これからの共創学についてどんな思いでいらっしゃるかぜひお伺いしたいです。

井上 宮田さんと出会ったのが昨年の3月21日だったんですね。初めてお話しをさせていただいたときからまだ1年なんだなと、昨日宮田さんと車に乗っていたときに思いました(笑)。

そして、振り返るとここまでの大学設立の取り組み自体が共創だなと感じました。宮田さんとお会いする半年前に川戸さんに大学のことをお話しさせていただいて、さらに半年前に飛騨市の都竹市長に相談していて。この2年、常に色んな方とお話しをさせていただいて、ずーっと形を変化させながら進んできました。手元にCoIU(仮称)を紹介するパワーポイントがあるんですが、色んな方と会話をすることで毎日スライドが何枚か変わっていくんですよ(笑)。だからこそ、この大学をつくるプロセス自体が共創なんじゃないかなって。

学部ももともと経済学部という話だったのが共創学部に変更したわけですが、そのプロセスも楽しくてですね、共創学部という存在自体がすべてを物語っているなと思います。学生さんたちが入ってきてもこういった日々の連続になるような教育の枠組みをつくりたいですね。

Youtubeにてトークセッションが動画で閲覧できます。
《前編》
https://www.youtube.com/watch?v=vchw8bCV37w&list=PLpV5WX9wB71tkMjC3AKtlJiMMWxE4J8h5&index=5
《後編》
https://www.youtube.com/watch?v=JJYS6AX88ps&list=PLpV5WX9wB71tkMjC3AKtlJiMMWxE4J8h5&index=6

CoIU(仮称)学長候補宮田 裕章
1978年岐阜県生まれ。2003年東京大学大学院医学系研究科健康科学・看護学専攻修士課程修了。同分野保健学博士(論文)。早稲田大学人間科学学術院助手、東京大学大学院医学系研究科医療品質評価学講座助教を経て、2009年4月同准教授、2014年4月同教授(2015 年 5 月より非常勤) 、2015年5月より慶應義塾大学医学部医療政策・管理学教室教授。専門はデータサイエンス、科学方法論、Value Co-Creation。2025日本万国博覧会テーマ事業プロデューサーをはじめ多様な社会活動に携わる。地域とともに創る新しい未来のイメージについては今後SNSなどを含め様々な媒体で発信していく。
一般社団法人 飛驒高山大学設立基金 代表理事井上 博成
平成元年(1989年)生まれ。岐阜県高山市出身。東日本大震災をきっかけに地域の新しい価値を感じ、出身地である高山市と京都大学との間で2014年~自然エネルギーに関する研究開始をきっかけに高山市へ戻るようになる。京都大学大学院経済学研究科博士課程研究指導認定退学。主な研究領域としては自然資本と地域金融。自然エネルギーを研究⇔実践する中で、小水力では、飛騨高山小水力発電㈱を設立(2015年)し全国各地で小水力の事業化を行うようになる。木質バイオマスを研究する中でエネルギー利用のみならず、木材そのものの利用に高い関心を持ち、飛騨五木㈱(2015年)の立ち上げや、金融視点から東海地方で当時唯一の管理型信託会社である、すみれ地域信託㈱(2016年)の設立など理論と実践とを日々往復している。
一般社団法人 飛驒高山大学設立基金 理事川戸 健司
自然電力株式会社代表取締役。 大学卒業後、風力発電事業会社に就職。その後、東日本大震災をきっかけに「エネルギーを通して社会課題を解決していきたい」という想いで2011年6月に自然電力株式会社を設立。「青い地球を未来につなぐ」を会社のPurpose(存在意義)とし、日本だけでなく南米、東南アジア等においても再生可能エネルギー事業を行う。 特に今後は、再生可能エネルギーを通して世界中のLocal(地域)を繋ぎ、新たな価値を生み出すネットワークを創ること、そして未来への再投資を行う新たな資本循環の仕組みを構築すること を目標に掲げ、日々活動している。 1980年、千葉県生まれ。開成高校、慶應義塾大学理工学部卒業。
一般社団法人 飛驒高山大学設立基金 理事 秋山咲恵
起業家。1994年株式会社サキコーポレーション創業。最先端のエレクトロニクス製品の製造工程向けの画像認識技術を使った自動外観検査装置メーカーとして世界的ブランド構築。2018年社長退任。ソニーグループ(株)、オリックス(株)、日本郵政(株)、三菱商事(株)社外取締役(現任)。内閣府国家戦略特区諮問会議議員、経済産業省産業構造審議会委員、J E T R O(日本貿易振興会)運営審議委員など公職多数。京都大学法学部卒業。 京都大学経営協議会委員(2014-2020)、国立大学法人奈良女子大学 客員教授 (2022.4新設の国立女子大初の工学部にて企業論担当予定)
good design company代表水野 学
クリエイティブディレクター/クリエイティブコンサルタント。1972年東京都生まれ。多摩美術大学グラフィックデザイン科卒業。1998年 good design company 設立。ブランドや商品の企画、グラフィック、パッケージ、インテリア、宣伝広告、長期的なブランド戦略までをトータルに手掛ける。主な仕事に、相鉄グループ、熊本県「くまモン」、三井不動産ロゴ、JR東日本「JRE POINT」、中川政七商店、久原本家「茅乃舎」、黒木本店、Oisix、NTTドコモ「iD」ほか。2012-2016年度 慶應義塾大学環境情報学部(SFC)で特別招聘准教授を務める。国内外で受賞歴多数。著書に『センスは知識からはじまる』(朝日新聞出版)、山口周氏との共著『世界観をつくる 「感性×知性」の仕事術』(朝日新聞出版)ほか。

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