【トークセッション】飛騨から世界に発信する新しい共創学

4/24(月)に行われたイベント『Co-Innovation Conference 2023』では、「飛騨から世界に発信する新しい共創学」をテーマに都竹淳也市長や宮田裕章CoIU(仮称)学長候補、古里圭史CoIU(仮称)監事によるトークセッションが行われました。

4/24(月)に行われたイベント『Co-Innovation Conference 2023』では、「飛騨から世界に発信する新しい共創学」をテーマに都竹淳也市長や宮田裕章CoIU(仮称)学長候補、古里圭史CoIU(仮称)監事によるトークセッションが行われました。また、全国各地で連携し共創を推進していく新機関「Co-innovation Laboratory(略称 CoIL/コイル)」の設立と今後の共創内容についても本イベントで発表しましたので、その一部をピックアップして紹介いたします。

目次

  • 「Co-Innovation Labolatory( 通称CoIL/コイル)」とは?
  • 飛騨は日本の未来予想図
  • コミュニティの手触り感と共創
  • 主体を超えた共創の到達点


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「Co-Innovation Labolatory( 通称CoIL/コイル)」とは?

2026年の開学(2024年10月文科省申請予定)を予定しているCo-Innovation University(仮称・以下CoIU)。その学びの3本柱は、大学教育・リカレント・コンソーシアムです。前回のCo-Innovation Conference 2022(2022年3月26日開催)では大学の学びのカギとなるボンディングシップについて紐解いてきました(当時のトークセッションの様子はこちら)。今回は、リカレント体系と新機関「Co-innovation Laboratory(略称 CoIL/コイル)」の設立を発表しました。


[宮田裕章 学長候補(以下宮田)]

大学の名前としては、東京や大阪も含めた様々な地域とともに未来を作っていくということで、あえて土地名を名称から外してCo-Innovation University(仮称)と呼称していますが、何をする大学かというと新しい文明をつくっていこうと。文化であれば1人から始めることはできると思うんですが、文明は絶対1人で作れないものなので、これをいかに意識的につくっていくのかということを問いながら歩む、そういう大学にしていこうと考えてます。そして、実践の中でともに学ぶ新しいネットワークを作る上で、なくてはならないものが新設されたCo‐innovation Laboratory(以下CoIL/コイル)ですね。CoIU(仮称)はまさに人々が緩やかに繋がる場なんですが、CoILにはこの輪を広げていこうというメッセージが込められていて、ロゴデザインに反映されています。コンセプトは「繋がる輪から未来が広がる」ということです。詳細なプランについては、井上さんからお話をいただければと思います。


[井上博成 代表理事(以下井上)]

私からはコンソーシアム(CoIL)とリカレントの概要について簡単にご紹介させていただきます。CoILについては、様々な企業や大学そして地域と繋がる形で、テーマを掛け算しながら取り組みを進めていきます。例えば経済産業の活力、安心安全、また地域資本、他地域との連携といった地域の多様なテーマで取り組みを進めていきたいと考えております。



その第1弾として飛騨古川から取り組みをしていこうと、領域をセットして実践を進めているところです。具体的にはエネルギー事業や林業など、いろんな取り組みがあり、今後各地の拠点とも連携していくというプランで検討を進めております。
リカレントプログラムにつきましては、領域横断の共創プログラムということで、1dayや1週間程度のフィールドワーク型また数ヶ月の実践型を準備しています。企業や自治体、個人など様々な方にご参加いただき、理論・実践・対話の越境学習を通じて、横断することをテーマとしています。そして昨今のリカレント教育で課題になっている、実践フィールドが提供できていないことや、実践が提案で終わってしまうこと、効果的なフィードバックがないということを解決をしながら、様々なプログラムを推進していきたいと考えています。

飛騨は日本の未来予想図



[平田麻莉(モデレーター、以下平田)]

今日パネルトークのタイトルが「飛騨から世界に発信する新しい共創学」ということですけれども、まず宮田さんの方から、飛騨に拠点を作ることになった経緯ですとか、飛騨が持っているポテンシャルについてぜひお話いただければと思います。

[宮田]

飛騨の関係人口は600万人(コロナ前)なんですが、これから日本のインバウンドっていうのは、主要産業の中核になりうると思います。産業規模で自動車産業を2030年に超えるんじゃないかという予測も立てられているぐらいポテンシャルがあります。それだけではなくて、例えば森林面積93%でほとんどが広葉樹という飛騨市なので、サステナビリティの観点からマテリアルシフトが進んでいく中でポテンシャルがあると。

そして少子高齢化、人口減少というような課題を乗り越えることそのものが、やはり未来にも繋がっていくんですよね。やはり、振り返ってみると文明が生まれてきた背景には、強力なプレッシャーがあったんですよね。その中でどう未来をつかむか、ということにも繋がっていくと。これから中国など東アジアはまもなく高齢化の中に入っていきます。日本においても間違いなく超高齢化っていうのが目前に迫ってきていて、これは地域の方が進行してるんですよ。つまり、より未来にいるということですね。
この未来の日本の縮図である地域から見ていくということもすごく大事なのではないか。こういう要因が重なって、飛騨を始まりの地としてCoIUを通じた各地での取り組みをご一緒できることを光栄に思っています。

[都竹淳也 飛騨市長(以下都竹)]

先ほど宮田さんからお話がありましたけども、飛騨地域全体で人口減少してますし、飛騨市は5年間で2000人減ります。私は人口減少先進地だって言ってるんですけど、論理的に考えて人口は必ず減りますので、これはもう確実な未来だということです。その意味でいくと、この先日本全国が飛騨市と同じような姿になる。これはもう日本の未来予想図なんだと思います。そうした中で今までの考え方とかモデルというのがまったく役に立たなくなる時代に、我々地方行政ってのは何とか解決しようと毎日毎日奮闘してるわけです。

その中で新しい考え方を持つ人間が生まれてこないと日本に未来はないんだっていうのは、地方にいて強く感じるわけですね。CoIU(仮称)はまさしくそこを学んでいく、しかも実践を通じて学んでいくということで、飛騨っていう地が貢献できることがたくさんあるわけです。これまで地域資源を使って何とかやってるわけですけど、そうした実践を学びの素材として提供できるし、奮闘している思考や取り組み、フレームワークが必ず他の地域にも活かしていけるんじゃないかと。
確立された方法を学んでいけば良いわけでなくて、過疎・人口減少が進む地域の実践が学生さんの思考を作っていくと思いますし、その枠組みこそが日本を維持・発展させることに繋がるんだって思いを持ってます。飛騨がそうした舞台になることができれば、こんなに素晴らしいことはないし、いろんな人たちが学ぶ交流の中で、地域が発展していけばいいなという思いを持っております。

コミュニティの手触り感と共創


[平田]

古里さんにも飛騨市でこれまで実現されてきたことや、これからどんなことに挑戦してみたいかお伺いできればと思います。


[古里圭史 監事(以下古里)]

私は飛騨市生まれで代々続く小売店の息子なんですけれども、13年ぐらい前にUターンをして飛騨で地域金融に関わってまいりました。昨年から独立して、CoIU(仮称)の取り組みにも参画しているんですけれども、私も今お二方が話されたようなコミュニティの力を信じながら、地域の中でいかにお金を回していけるか、関係性を作っていけるかっていうことに取り組んできました。

特に2017年につくった「さるぼぼコイン」という地域限定の電子マネーを地域の中で広げるということに関わっていました。5年やってきてユーザーや加盟店は飛騨で50%ぐらいのシェアがありまして、月次チャージ額が1億5000万~2億円ぐらい自発的に動いて巡っているような状況なんですね。こういった仕組みがうまく回るっていうところからも、地域の方々が自分たちのコミュニティに対する愛とかシビックプライドみたいなものを、前提としてしっかり持っている地域なのだと感じています。
そういう意味ではCoIU(仮称)が飛騨から始まって、しっかりモデルを作って日本全国の同じような地域に展開していくっていうのは、非常に可能性があると思っており、その点をとても楽しみに参画してます。

[宮田]

古里さんにお話いただいたさるぼぼコインなんですけど、私の視点からも本当に素晴らしいんですよ。繋がりっていうのはこれまで、フィジカルな部分というか、ときにしがらみのように解釈されることもあったんですよね。それで、地域にいる若者たちがなぜ出ていくかっていうと、繋がりが深いのはいいんだけど、そこから抜けられない。これが未来の足を引っ張るもののように感じる。それで東京に出てくっていうことに繋がってしまうんですけども。これからは、その繋がりを自分たちで一緒に作り続けて、選べるっていうことがすごく大事だと思います。

このさるぼぼコインという土壌がある中で地域の持つ多様な可能性をどう作っていくのか、というときに今までの産業革命以降の大量生産・大量消費モデルのようなトップダウンでみんな同じことをしましょうってことではなくて、この手触り感、顔の見える、このコミュニティの中でともにいろいろな可能性を作っていこうということです。



もちろん今までの社会でもそれはできたんですけども、なぜ共創学なのかっていうと、デジタルがそれを可能にしていくんですよね。今までは繋がりが見えなかったと『お金より大事なものありますよ』って言ってても、やっぱりお金しか見えなかったんで、そこだけでどうしても社会が回ることになっていたんです。

ただ自然との繋がりだったり、環境だったり、命だったり、可視化できるようになってきた。ここを軸にともにつくるっていうことなんです。そしてこれまでの主役であった農業革命は、食べ物を食べたらなくなる、産業革命は化石燃料を使ったらなくなる。排他的に所有して奪い合うと、頭を押さえつけ合う競争だったのですが、デジタルっていうものは使ってもなくならないんですよね。ともに使うほど価値を増していく。こうなってきたときに、“共創”、ともにつくる、これが新しい社会のキーワードになっていくんじゃないだろうかと。

今までは学問っていう一つの知識体系の中で、それを適用していくという、つまり社会の仕組み自体も既につくられていて、そこにはまっていくようなイメージがどうしても教育の側面だったんですが、これからそこ自体が揺らぎながら未来をつくっていくということで、それはときにファシリテーターであり、コーディネーターであり、それだけじゃなくて新しい問いを立てるイノベーターであったり、全体をまとめていくリーダーであったり、そういった繋がりの中で力を発揮する人材がここからの時代は大きな可能性を持ってるんじゃないかなと思います。

主体を超えた共創の到達点


[平田]

共創がどんなことを生み出していくのかすごく楽しみなんですけれども、都竹市長の方から、これからCoIUでどんな共創をしていきたいかイメージありますでしょうか?


[都竹]

飛騨市では、例えば介護にしても介護人材の専門学校をつくらなきゃいけないんですけど、飛騨ではできない。そうすると遠くにある学校と連携して、そこを飛騨市の学校と位置付けることで人を育成してもらう体制ができる。これを応用することで、例えば介護福祉士だったものが作業療法士に変わってく、今度は留学生に変わっていく可能性を見出していける。

他にも地域を手伝ってもらう関係人口のプロジェクト「ヒダスケ!」というのを会員数1万1000人の「飛騨市ファンクラブ」と連携してやっています。その中で何も言わないけど手伝いに来てくれる人たちがいるっていうことに気がついて、ヒダスケ!では地域の困りごとをプログラムにすると手伝いに来てくれるっていうそんなことをやっている。
これ全部共創です。まさしくこういった実践をやってくっていうのが取り組みですし、その基本というか思考の枠組みを、CoIU(仮称)で教えていくっていうことになるんだろうなっていうイメージを持ってますね。

[古里]

都心部の企業さんも含めて地域との繋がりっていうのは、取引ベースではあるのかもしれないですけれども、やはりもう少し踏み込んだ連携の可能性とかっていうのが、まだまだ模索できると思ってるんですね。地域から学ぶこともきっとあると思ってまして。そういう意味では先ほど市長もおっしゃったように課題の先進地ですから、企業の皆さまにもリカレントの文脈で実際の地域・地方の現状を肌で感じていただきながら、そういった課題に対してどんなソリューションを考えられるのか、そこで実際どう動けるのかを考えるということは非常に多くの学びになると思います。そして相互の理解を深めるきっかけにもなると思っているんですね。

[宮田]

これまでの地方創生の取り組みは、都市化そのものは全く止まらないっていう中で、そのトレンドに抗ってくださいという非常に難しいものだったんですよね。これからの未来、どうなっていくか考えたときに、地域がいわゆる独立=孤立して何とか未来に向かうっていうことだけではなくて、地域同士が繋がりながら、新しい未来を作っていくっていうのがこれから必要なんじゃないかと。

例えば飛騨では、森林資源を核にしたビジネスモデルがつくれる。もしかしたら森林面積が多い高知や他の地域でも使えるかもしれないですよね。この地域との繋がりをネットワークとして、未来を作ろうというのが今日のCoILですし、そしてその繋がりの中で企業の未来もともにつくっていきたいなというのが、皆さんとのお願いであり我々の志でもあるということですね。

[都竹]

地方で何かをやるっていうと多くの人が、綺麗な空気がありますとか綺麗な水がありますとか美味しい農産物がありますっていうんですけど、どこにでもあるんです。
今は地方も含めて豊かになっている。豊かになっている中で何を追い求めてるかっていうと、自己有用感であり自分というのは本当に大事にされてるんだっていう感覚。これを味わいたいというところに、世の中の幸せってものが確実に移行してて、これをウェルビーイングっていうんだろうと思ってます。

だから先ほど申し上げた飛騨市のヒダスケ!っていう関係人口のプロジェクトでは、頼んでもいないのに東京からお金を出して手伝いに来るんですから。こんなことありえないじゃないすか。でもそれがあるっていうことは、お金だったり物質的なものじゃなくて自己有用感。みんなが自分は大事にされてるんだって気持ちを欲している。これが豊かになった社会の究極の姿だと思ってるんです。

そこがまさしく共創ということだと思うし、それを実践することで、飛騨市が一緒になって取組むモデルがつくれたら、全国の地方自治体のやり方変えていきますね、確実に。確実に変えて、全部自分たちでやらなきゃいけないんだと思ってたのが、ないものは頼ればいいんだ。それがみんなのハッピーなんだ。というふうなことが実現できる社会がこれからの地方自治体、これからの日本の未来だと思います。


Q「地域間連携にぜひ関わっていきたいんですがどこから関わればよろしいでしょうか?」というご質問をいただいてます。

[古里]

共創協働を掲げている大学なのでちょっと興味を持っていただいたり、こんなこと一緒にできたら面白いんじゃないかなってことを思われたらですね、本当に気軽にコミュニケーションをとって頂きたいと思います。そういった繋がりから、具体的な関わりしろが見出せるはずです。


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